40代の真面目な恋 マッチングアプリ発(3)


長く婚活を続けたすえにとっても素敵な男性と巡りあった親友は、ご主人との恋が始まった頃、悩んでばかりいた。

いつも眉間にシワを寄せて「思ったのと違う」「女心をわかってくれない」とわが家のソファに寝ころんで、そのまま翌々日のお昼にすごすごと帰って行ったりした。






40代でほんとの恋を知ったわたしの親友、の当時の恋の悩み


40代の真面目な恋 マッチングアプリ発(1)

彼女の話をよくよく聞くと、恋を知ったばかりの高校生男女のむず痒くなるような、想いの行き違いでしかなかった。可愛い、可愛い、ただただ可愛い。

1つ年上の親友が、20歳も年下の女の子に思えた。

「クリスマスに何がほしい?」と聞かれたから「アクセサリーかな」と答えたところ彼はしばらく黙り込んで「さすがにそれは無理だよ」って言ったんだよ! どう思う?! 指輪を贈る価値も私にはないってこと?!

その時の感情が蘇るのか、最後は声を震わせて泣いていた。まるでそこに彼がいるかのように彼女は目を真っ赤にして、スマホを睨みつけていた。

好きなんだ、彼のこと。

20代と30代前半のとてつもなく長い時間、親友はひとりの男性に身も心もささげてきた。

モラハラ男からの長期間の洗脳は、別れてから数年が経ってもなかなか解けず、親友とはいえしょせんは『外野』であるわたしたちはハラハラだったりヒヤヒヤだったりさせられてきた。

やっと出逢った――外野から見ると――「安心感がほかと違う彼」は、彼女にとっては「いい人かもしれないけど、ときめかない男性」だった。

彼女は結婚もしたいけれど、それよりうんと先に恋がしたかったのだと思う。

足元が盤石な彼と結婚をしたら、人生あと一周は食うに困らないはず。見た目こそ「イケメン」とは違うかもしれないけど、彼女と彼が並んだ姿は違和感ひとつなく“お似合い”だった。

わたしたちがいくらそう言っても、彼女はいつもどこか不服そう。すっかり癖づいてしまったへの字口は、両口角に下向きの矢印がついていた。

そんな彼女が『クリスマスにアクセサリーをもらえない』『アクセサリーのリクエストを拒否された』『私のことなんてたいして好きじゃないんだ』と拗ねている姿はあまりに愛しく、やっと胸をひと撫でさせられた。

目を吊り上げ、頬を赤く染めて怒っている彼女を前につい「ふふふ」と笑ってしまったら、怒りの矛先はみごとにこちらに向いた。




「なにがおかしいのよ」
「彼のこと、すっごく好きになったんですね」
「……そんなことないでしょ、話聞いてた?」
「どうでもいい男のことなら、そんなに怒んないでしょ」
「……」

「言えばいいじゃん。指輪がほしいって。アクセサリーがほしいんじゃなくて本当は指輪がほしいんだって、言えばいいじゃない」
「言えるわけないでしょ」

「どうして? 彼はそういうの気づかないタイプですよ。女心を分からない人なんじゃなく、女心をほとんど知らない人です。言わないと気づかない人です、なぜなら女性をほとんど知らない真面目な人だと思うからです」
「うえええん!!!」


忘年会の慌ただしさが一段落した店内は、もつ鍋屋には似合わないクリスマス仕様。湯気と軽い酔いに浮足立ちたくなる気持ちをおさえ、41歳になろうかという親友を慰めていた――。

生まれて初めて彼女の左手の薬指にリングをはめた人は、わたしの親友の夫になった。あれから8年ほどの時がすぎて、彼女の夫はなんだか渋みも増し、彼女のセンスでオシャレに垢抜けていた。

そしてなにより、わたしの親友は出逢った時よりも彼に恋をしているらしい。






マッチングアプリで出逢った“彼”とわたし

40代の真面目な恋 マッチングアプリ発(2)

――10年前、9年前、8年前に親友にかけ続けた言葉を反芻する。

言えばいいじゃん。
言わなきゃ伝わんないよ。
素直に、もっと素直に。
素直にならなきゃ失っちゃうよ。

なるほど、そうか。次はわたしの番だったんだ。

今月末で廃業する仲良しの占い師さん
youtubeで活躍されるタロット占い師のたまきねえさん
目下マッチングアプリ『マリッシュ』で婚活に励んでいる先輩
先輩に連れていかれた、霊視ができるという“ふつうのおばさま”

計4人から、似たようなことを言われたわたし。




“彼”がほしいのは言葉だけど言葉じゃなくて「確信」だと先輩は言った。わたしの本心や本音が見えないから、“彼”は一歩進めないのだと占い師さん達が言った。


40代の女も50代の男もよくある恋に確信がほしい

40代の真面目な恋 マッチングアプリ発

不安なのは彼の方だと先輩たちは言った。
『見えない』のはわたしの方だよと言いたかったけど、飲みこんだ。

――今から5年ほど前の特番で、当時独身だった有吉さんや坂上忍さんたちが「アラフィフ男の恋愛観」を語っていらした。


よほどの確信がないと、なんなら女の子側から告白されないとこちらからは動けない。

この歳で、50も近くなって、今さら自惚れて浮かれて調子に乗って告白して振られる……みたいな経験は……そんなの怖すぎる――。

そんなことを言ってらした。有吉さんや坂上さん以外のアラフィフの男性ゲストの方々も勢いをつけて同意されていたことを、ふと思い出した。

不安なのはわたしの方だと思っていたけど、先輩たちが言うようにやっぱり違うのだろうか。先輩に紹介された、霊視ができるというおばさんは言った。

👵「もっとあなたが素直に“好き”を伝えないと、彼はどうすればいいのか分からないと言っています」
👵「あなたなりに好意を伝えているみたいだけど、彼はまだまだそれじゃ強く出られないと言っています」


わたしなりじゃ、ダメなんだ。
わたしなりじゃ、足りないんだ。

酸いも甘いも噛み分けてきた大人の恋は、もっと簡単だと思っていたけど、どうやら「難しくしてしまった」のはわたしに原因があるらしい。

ならば、その責任は持ちましょう。
撒いた種なら相手に任せず刈りましょう。

「あのね、わたしあなたのこと結構好きだよ」

――これで少しは自信を持ってくれるだろうか? 遅々として進まない宙ぶらりんな関係から、これでやっと抜け出せる! と思ってくれるのだろうか。