
マッチングアプリで知り合った彼は「秘密主義者」で、わたしをいちいちてこずらせてた。けれど初めての電話をきっかけに、彼は一気にトップギアを入れた。
キャンディボイスの魔の力

およそ28年前、ボイストレーナーから指導をうけて「新しい発声」を手に入れた。声そのものと話すトーンは、当時の松田聖子さんの歌声に名付けられた『キャンディボイス』のように。話すテンポはややゆっくり、話し方は絡みつくように甘く。
とはいえ公的な場に"キャンディトーク"はいただけないので、オフィシャル用に松嶋菜々子さん風の話し方をもトレーニングしていただいた。
だから、声とトーンとテンポと話し方だけは唯一の宝だ。手間もお金もかかっているし、今尚、発声のために「体幹」をずっと鍛えている。※数年間は盛大にサボっていた → 今より+14kg
Uber EatsのCMの松嶋菜々子さんの台詞――
- 「乗り心地はどう?」
- 「お家まで送るわね」
- 「風を切って行くわよ」
この3つは手前味噌だがかなり似ていると思う。←夜な夜な秘密裏に練習する47歳
話を戻そう――声の威力は絶大だ。威力どころか『魔力』を手に入れたように錯覚することもある。
もしもわたしと同じく外見にも内面にもいまいち自信が持てない方がいらっしゃったら、ぜひとも「発声」を訓練してみてください。人生の風向きがわりと変わります。笑
さて、秘密主義の彼はどうなったかというと――。
沼・沼・沼、沼ー!

1日中さえずりっぱなしの鳥の声に耳を傾けながら「人ってこんなにも分かりやすくメロメロになるんだな、激甘だな」と感心する。
彼からのLINE通知音を「鳥の呼び声」に設定しているため、朝から昼から夜の寝入りまで ♩チュチュチュン ♩チュチュチュン ♩チュチュチュン ♩チュチュチュン 忙しなく鳥が鳴いている。初電話から1週間、毎日毎日寝ても覚めても ♩チュチュチュン ♩チュチュチュン
集中して仕事せーよ。
集中して仕事せーよ。
こんなにもスタンプを使う人だったとは……
こんなにも絵文字を使う人だったとは……
こんなにもLINEをうってくる人だったとは……
気づかぬうちに、見た目はそっくり中身は異なる瓜二つの別人『彼2号』のようなコピーロボットとLINEをしているのではなかろうかと、わたしは首をかしげたくなる。180度の別人感。
今時の言葉でいうと「沼」という状態だと思う。
確かにBTSのテテに堕ちた時のわたしがまさにこんな状態だった。寝ても覚めてもテヒョン、テヒョン。テテテテテテテテ言っていた。
この3年でテテはとっても色気たっぷりの大人の男に成長しました、これからもテテ沼にひたりにひたって……ってテヒョンの話じゃないのよ!!!
あらー♡
あららららー♡
テテー♡
恋する男は思春期真っ只中の中学生のように

激甘でメロメロでデッロデロになった自分に気づき、ふと我に返る瞬間も1日に2度くらいはさすがにやってくるらしく、そんな時は丁寧でインテリジェンスな『私モード』に口調が戻る。
「私みたいな者に付き合ってくださり、有難く思っています。いつも癒されています。今日は午後から――に出張でどうたらこうたら」
とかなんとか。私モードのLINEへの返信に「はーい。いってらっしゃーい♥」とハートを一粒付け足したり、「がんばってね、疲れた時は珈琲一杯分だけでも休憩してね」と音声メッセージを送ると高速で激甘モードに切り替わる。
大丈夫かこの人……。
大丈夫かこの人……。
独占欲と執着心の片りん

人間は「愛する」ことで幸福を感じられるタイプと「愛されている」実感を得て心身が満たされ落ち着くタイプの2つに分かれるらしい。
わたしは間違いなく後者で、彼はKinkikidsさんの往年の名曲『愛されるよりも愛したい』マジで――なタイプだと思う間違いなく。
もはや付き合ってるのと変わりないのでは? とも思える、新たなフェーズに入った彼とわたしを客観的に見ながら「こんな出逢いが自分にやってくるなんて」と胸が弾む毎日、が、まだしばらくは続くだろうと思っていた矢先――。
「彼ね、たぶんだけど……本当は独占欲が強いと思う。あかつきの行動とか知りたいはずよ、知って安心したいはずよ」
少し前に先輩からかけられた言葉の意味を思い知る出来事が、わたしのうっかりミスとともに突然やってきた。
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