
マッチングアプリで出逢った秘密主義の彼は、自分の秘密に踏み込ませないために相手の敷いた境界線にも気を配っていた。
けれど、たった1度の24分間の電話が彼の"タガ"をはずしはじめる。
カード曰く、独占欲と嫉妬心が"とにかく強い"

"初デート"に利用するレストランを探すべく、彼は「どのあたりに住んでるの?」とたずねた。当たり障りなくさらりと答えれば良かったものの、言葉につまって曖昧に濁してしまったわたし。
人は誰しも"隠されると見たくなる、知りたくなる"ものだ。彼も多分に漏れず。この出来事をきっかけに、彼が後ろ手に隠していた『執着心のスイッチ』はONに入ってしまった――。
「住まいはまだ言いたくないです」
「わかった」
「言いたくなったら言う。今は言いたくない。それ以外に他意はないわ」
「了解」
ほんのお遊び気分でタロットカードを引いて、彼の胸中を知ってみようとyoutubeを開いた。まるで引き寄せられたみたいに1件の動画が飛び込んできた。
これまで何度か見てきた「たまきねえさん」のタロットとはまるで違う、早口のマシンガントークでリーディングをするちょっぴり愉快な女性が何度も繰り返す。
彼は独占欲と執着心と警戒心がものすごく強いです。でもそれを絶対に悟らせまいとポーカーフェイスを貫いてきたため、これまでの彼の言動はすごく分かりづらかったんじゃないかと思います。
- 彼の独占欲と執着心が行き過ぎた時には~
- この方はとにかくあなた様を独占したくて仕方ないみたいで~
- この男性の独占欲が治療の必要なレベルまでいったら~
- この人の執着心はとにかく強くて~
- あなた様のすべてを知りたいと言ってるカードですね、これは~
……そ、そんなになの?
あんずまろんさんのタロットカードリーディング

たかがタロットカード、されどタロットカード。はじめはギョッとした早口マシンガンリーディングもなんだか不思議と心地よくなり(?)、取り急ぎ「チャンネル登録」を済ませてお昼休憩を30分ほど過ぎてからわたしは席に戻った。※早口マシンガントークのリーディングがめちゃくちゃ長尺だったんです 笑
若手放送作家から預かった企画書をぺらぺらとめくりながら、頭の中はタロット占い師『あんずまろんさん』が早口で何度も仰っていた「彼の独占欲と嫉妬心の強さ」「それを知られまい、悟らせまいと必死に自己を抑えていた(る)」について考えていた。
get hooked on...

ほんの少し前――「通話してみたい」というわたしの申し出を「いつかね」で誤魔化した秘密主義絶頂期だった彼にぶつけた意地悪LINE。
口は堅く性格は重くなくお尻は軽めの女性を探している男性なんだろうなって、初めから思っているから大丈夫よ。あなたが必死になって隠すプライベートに、土足をねじ込むほど無粋なわたしじゃないわ。
これがよほど応えたのか「そうじゃない!」「誤解だ!」と言いたいけれど男のプライドなのか照れなのか、素直に「違うんだ」と言えない彼は
「こんな話をできるのも、あかつきちゃんだけだから」
「こんな話を聞いてくれるのはあかつきちゃんしかいないから」
「真面目な話も面白い話も相手してくれるのは、あかつきちゃんしかいない」
といったことを頻繁にLINEしてくるようになった。
君しかいない、君一人しかいないってことを言わんとしているんだろうし、十分に伝わっているから別にいいけど、男のプライドって幾つになっても取り扱いが大変な厄介アイテムなのねと思う。
強すぎる独占欲と執着心、そして高い高いプライドと素直になれないオヤジ心。
ふと周りを見渡せば、それらを持ち合わせたアラフィフのおじさんたちと、長年パートナーを組んで番組作りをしている。
ふと周りを見渡せば、それらを持ち合わせたアラフィフのおじさんたちと、長年パートナーを組んで番組作りをしている。
うん、大丈夫。いけるいける、慣れてる。この手のオジサンの扱いならわたしは慣れてる。元夫も似たようなものだったし、心配しなくても大丈夫だろう。
マンションの間取り図

――なんて思ってしまったからだろう。相当、気が緩んでしまったみたいだ。
彼が知りたくて知りたくて仕方のないわたしの住まいの「間取り図」を住所を教えない代わりのほんの冗談として
彼が知りたくて知りたくて仕方のないわたしの住まいの「間取り図」を住所を教えない代わりのほんの冗談として
「ここに住んでるよ」――と、LINE送信。
「当てていい?」
「どういうこと?」
「もしかして○○マンション?」
「???」
「当たった?」
怖い、どうして当たったの? ……偶然?
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