
タイミングを合わせて韓国のラブコメを同時に見始めてから2時間後――
「切なかったぁ! そういえばマッチングアプリで出逢うタレントさんの話題って最近多いですよね」
「ほんとだ~」「ほんとだよね」
「チーム☆昭和のオムライス」とマッチングアプリ

グループLINEの仲良し3人で盛り上がっていたゴールデンウィークど真ん中。有休をくっつけているので、わたしたちはまだもう少しお休みを満喫できる。
33歳になるKちゃんが「実は……連休中にマチアプしようと思ったんですけど」と言うと、35歳のYちゃんが「うんうん!」と妙に前のめり。
「やっぱりちょっと怖くて……」
「わかるー! なんか怖いよね💦」
「お2人、どう思います?」
昭和には珍しくなかった薄皮オムライスを何十年もかわることなく提供しつづけてくださっている某喫茶店の、常連客と新規客として知り合ったKちゃんとYちゃんとわたしは
食の趣味が合うと性格も合いやすいのか、ひと回り以上年齢が違うのに馬が合うのか、なんだか妙に親しくしてもらっている。
「お2人、どう思います?」
Kちゃんの問いかけにYちゃんは再び「怖いんだよねー」とリプライし、どうやらわたしの出番を彼女たちは待っている様子。
ここは空気を読むか、それとも本当のことを書くべきか。
空気を読めば今この瞬間は、共通話題で気持ちよくまとまる。けれどアンチマッチングアプリで盛り上がると、今後「そこで出逢った」とは言い出しづらい。よし、正直にいこう。
「実は」
画面の向こう側で彼女たちがゴクリ……と生唾を飲む気配がする。
マッチングアプリで知り合った男性と親しくしている旨をかいつまんで説明したところ、若い2人のテンションは一気に爆上がりした。
OmiaiにしようかPairsがいいかとアラサーの彼女たちが盛り上がっている傍ら、目下の"彼"からLINEが届いた。
親しい関係にだけ許される"どうでもイイLINE"

「仲間たちと焼肉いってくるね」
「楽しんできてくださーい」
良い意味で、こんな風にどうでもいい報告をしあえる関係になってきたんだなーなんてことを思う。離婚してからの10年間、異性とのLINEやメールの大半は『意味のある内容』だった。
- 仕事上のトラブル報告や相談・愚痴
- 健康上の不安~診断書の要不要
- 誰某のよからぬ評判~キャスティング保留etc,,
つまりはもっぱらが仕事がらみで、色艶のあるメッセージもなければ「親しい男女だから許されるどうでもいい報告」なんて遠い昔の出来事であり、この先、未来永劫なさそうだと思っていたのに人生ってほんと不思議だ。
マッチングアプリをはじめたきっかけは、知り合いである"苦手な女性"がアプリを通じて出逢った男性と再婚したという報告を耳にしたからという些細なものだった。
出会い系の怖さを知る大人世代にはまだまだ悪名高いアプリの出逢いだけれど、挑戦してみてよかったなと今は思っている。『苦手な女性』にありがとう、あなたのおかげよ――と伝えたくなるほど。
4のつく日の夜の急☆展☆開~火をつけたのはいりこ出汁

ふと、youtube内でタロットカードを用いたリーディングをしておられるあんずまろんさんの占い結果を思い出した。
「4の時間や日にちにお相手さまは動きます。うーん、時間じゃないなぁ。日にちかなぁ。4日後? 4の日? 4週間後ではないです、4か月後でもありません。4日後か4のつく日だなぁやっぱり……4時間後って人もなかにはいるかもしれませんけど、日にちのイメージが強いですね」
今日は5月4日か。彼は仲間と焼肉だし、わたしは仲良しさんと韓国ドラマ同時上映(?)だし、会えそうにないわね。
というか初デートはそもそも6月を予定しているのだから、お相手さまは「4の時間や4のつく日にち」にどんな風に動くのかしら? なんて思ってた。
マッチングアプリトークに花を咲かせる若い2人にさよならを告げ、キッチンに立つ。彼がいちばん好きだという、都内の老舗のうどん屋さんの「お出汁」にできるだけ近づけられるよう、数日前からひそかに特訓している。
「いりこ出汁の扱いが慣れてなくてやっぱり難しいなー」
いりこ出汁と昆布だしを合わせた食欲をそそる香りに、愛猫と愛犬が鼻をふんふん鳴らしている。飼い主はまだまだ完成にはほど遠い出汁でつくった『素うどん』を今夜もキッチンにて立ったまま食す。
「あかつきちゃんはもうご飯食べたの?」と彼からLINEが入った20時前。食べかけの素うどんを写真に撮って返信する。
「うどん?」
「いりこ出汁を上手にとる練習をしてるの」
「ちなみにその出汁はなにに使うの?」
「○○のうどんのお出汁がいちばん好きだと仰っていたので、少し前からひそかに練習してるんです」
わたしのこの発言で『火がついた』とご本人が仰っていたのですが、それはまた別の機会に書くとして――。
「いつも何時頃に寝てるの?」と5月4日の23時過ぎ、唐突に彼からLINEが入った。
この時になぜそんな質問をするんだろうと気づけばよかったのだけど、夜の韓ドラタイムに集中していたわたしは何も考えず「近頃は2時くらいと遅いんです」と呑気に返した。
まさか、あんずまろんさんのタロットリーディングの読み通りに4のつく日の今夜、彼がこちらに向かって車を走らせる準備に入ったなんて思いもせずに。
