高齢親 免許返納 説得方法 (2)

70代の両親の熟年離婚が成立してひと月とすこしが過ぎた。

自立型のサービス付き高齢者住宅(通称・サ高住)に入居した母は見違えるほど生き生きとし、毒母だった頃の面影がすっかりと影をひそめた。








サ高住での暮らしはもう手放せないんだとか

高齢親 免許返納 説得方法 (3)


毒母だったなんて過去はすべてわたしの見ていた幻で、実はとっても優しくて良い母だったのでは? と、少なくとも2度は勘違いをしたくらいである。笑 ※のちにきちんと(?)毒母だった頃の片鱗どころか全鱗は見せられる

ホテルライクな新しい暮らしは、がちがちに管理されたものではなく、とはいえ常に“フロント”にスタッフの方が万一に備えてスタンバイされていて、その安心感は母に心の安定をもたらした。

ゆえに、娘であるわたしに対する発言にも棘がなく、電話越しに聞こえる声も陽気。まるで箸が転んでも笑う年頃の女の子のよう。話す内容すらも、前向きでポジティブになった。

「井の中の蛙大海を知らず」ということわざがあるけれど、濁った池を飛び出して澄んだ池に移った母は、ようやく空が青いことを知れたのだと思う。

一方、離婚された側の父はというと――。


親の老後と向き合うには精神力と体力が要る!

高齢親 免許返納 説得方法 (5)


  1. 免許返納をさせること
  2. 新車を購入させないこと
  3. 自宅を手放すこと
  4. 施設に入居すること

弟と話し合った結果、父に対する課題は上記4つに絞られた。

高齢者の免許返納問題は根深くしぶとく、1年越しで説得していく覚悟で! とあちらこちらで言われているけれど、
1年も待ってるうちに大きな事件や事故を起こしてしまう可能性の高さを考えると、1日でも1分でも早く決着をつけたいところ。



親の免許返納~(納得)しない・(運転)させない・(話し合いに)応じない

高齢親 免許返納 説得方法 (2)


70代半ばにして独り身になった父のためのお弁当を作り、出勤途中に父の事務所に立ち寄るついでに――毎日ではないけれど――「免許返納をふくむ車のはなし」をするものの、

ああだこうだと言いわけをつけたり話題をかえようとしたり、免許返納となると事務所をしめなければならないだとか、
そうなると共同経営者の方(こちらの方ももう立派なおじいちゃまです)に納得してもらわなければならないだとか

その場で思いつく限りの、免許返納をできない理由や新車を買わなければならない訳を並べて、わたしを朝からげんなりさせた。

「会うたびにあなたを嫌いになります」
「昔は尊敬もしていたし頼りにもしていたのに」

と、喉元まで溢れる思いを飲みこむと身体がずしりと重くなる。

頻繁に例に挙げるのもどうかと思うけれど、高齢者の自動車事故としてあまりにも有名な『池袋暴走事故』関連のニュース映像や新聞記事、ご遺族の訴えや無念、世論などが

弟やわたし、そして母には「これは対岸の火事ではなく、明日は我が身(我が家族)の問題」と圧し掛かっているのに、当の本人は『他所事』と思っているナンセンス。



わたしはなんのために父に、お弁当をつくっているんだろう。
わたしはいったい“誰”に……誰の身体や様子を気にかけて、お弁当をつくっているんだろう。

自分のせいで加害者家族になってしまうかもしれない家族の身などまるで心配しない男は、どこの誰なんだろう。

流し台に投げ捨てたくなる菜箸を、調理台に乱暴に置いて、父方の祖父母が“おすまし”をする写真たての前に立つ。

「あなたたちの子育ては間違っていたと思います。事故や事件を起こす前に、あの人をもうそっちに連れて行ってほしいよ」

そんな風に手を合わせたことが幾度とある。
わたしの中に疑いようもないほど悪魔がいた。


免許返納に応じない親に対する「悪魔的」感情あるある

高齢親 免許返納 説得方法 (1)


――という話を歯科の先生と、彼と、家事代行をお願いしているフィリピン人のマリアさんと、閉院後の病院のクリーニングを専門に請け負っている働き者の田代のおばちゃん(65歳)にしたところ

「そのくらいのこと、介護する側や――免許返納などを――説得する側は50~100回は思ってるから気にしなくていい」と、謎の励ましをいただいた。

「えっ? そうなの?」

👔「そうだよ。そういう黒い気持ちと責任感、愛情や恩が、毎日何往復もする」

🐑「年寄りは頑固だからこっちは腹が立って仕方ない。時間をかけって双方が納得するまで~なんていうけど、こっちにも家庭があるし働いてもいるんだからそんな余裕はないもんねぇ」

💉「でも放っておくわけにもいかない。でも腹が立つ。自分のこともろくに出来なくなってるんだから素直に子どもの言うことを聞いてくれよ! 心配だから言ってるのになんで分かってくれないんだよ! その繰り返しですよ」

👱‍♀️「ニッポンノ介護ホームデ働クフィリピン人、増エテキテマスケド……疲レテ、イライラシテル家族多イミタイデスヨ」






――それぞれ違う場所で異なる相手に『愚痴と弱音』を吐いたのに、帰ってくる答えは似通っていた。

なーんだ! 心に悪魔が巣食うのはわたしだけじゃなかったんだと気が楽になった。制作会社の同期にも話をしたところ

「親の面倒を見る側は、絶対に“溜めこんじゃいけない”んだよ。
愚痴、悪口、弱音、できるだけつどつど零してすっきりして、また戦いに戻るんだよ。溜めこむと八方ふさがりになるから絶対に溜めこんじゃダメ!」

と、介護~看取りの経験から真摯なアドバイスをもらえた。

そっか。家族の数だけ、介護経験者や“免許返納説得者”って多いんだ。先輩たちはこんなにも多いんだ。と、行き止まりが近いように思えていた目の前の道が急に拓けた。

家族の問題だからとつい抱え込んでしまいそうになるけど、それがいちばんやっちゃいけないことなんだと知ることができたのは、大きすぎる収穫だった。




「施設」「ホーム」という言葉に拒否反応をしめす高齢者、父

高齢親 免許返納 説得方法 (4)


👦「7月の一週目の週末空いてる? お父さんと3人で話し合おう」
「空いてる。てか、いいの?」
👦「勿論。まずは免許返納だね。なんとなくだけど、それがクリアになったらあとは早い気がする」
「ありがとう! わたしもそう思う」

頼りになる弟と理解ある義理の妹が、隣りの県――わたしは都内在住、弟夫婦は横浜住民――という近いところに暮らしているのはなんと心強いことか。

ついでに書くと“彼”もこのたび都民から同地域の住民になったのだけど――父は「終わりの棲み処」にどこを希望するんだろう。

今のところ、自宅を手放すつもりはないらしいし、施設入居については「施設」という単語を聞くだけでも拒絶感がとてつもなく強いようだ。

施設入居=子どもに見放される

そんな風に思っているっぽい父に「それは違う」と伝えるには、分かってもらうには、どうすればいいだろう。

今の父の老いと歴史がつくった性格ではなくて、わたしの知る限りもっとも古い父の記憶から遡り、父の本来の性格と向き合う必要がありそうだ。