高齢親 免許返納 説得方法


父が“うそつき”だと気づいたのは、いつだったろう。
父が“針小棒大”に話を盛るくせがあることに気づいたのは、いつだったろう。






72歳で免許返納なさる高齢者が最も多い

高齢親 免許返納 説得方法 (5)


高齢者の免許返納が問題になって久しい。報道担当の同僚によると、現時点において「72歳」で免許返納をなさる高齢者が最も多いそうだ。※誤りがありましたので、訂正いたしました。申し訳ございません。

父はとうにそれを過ぎているし、実家のある街は自家用車を持たなくても十分に暮らしていける。わざわざ“大きすぎるリスク”を背負う必要などひとつもないのだ。それなのに――

父はなぜ今さら新しい車をほしがり、頑なに免許返納を拒むのだろう。

たまたま人の少ない時間帯だったとはいえ、父が、スーパーの駐車場でアクセルとブレーキを踏み間違えたのは今年の5月。

「前後に人がいなくてよかったわ~」

悪びれる様子もなく帰宅した父に、母は全身が震えたと言っていた。1日も早く離婚を成立させて“他人”になりたい、気がおかしくなりそうだったと声を強張らせていた。




毒母だった母と、弟とわたし

高齢親 免許返納 説得方法 (1)


「私がどれだけ説得しても言うことを聞かないし、また暴力を振るわれるのも怖い。このままじゃあんたたちの人生も狂うことになるよ、家族の問題を無視するなと“あのこ”にも言いなさい」

毒母憎し――母と縁を絶った弟とわたしは仲がいい。弟は家族の問題を無視しているわけではなく、母が父の傍にいる間は動かないだけだ。でもそんなこと、母には言えない。

母から弟の近況をたずねられても、「私に対して何を怒っているのか知っていることは教えてほしい」と何度頭をさげられても、知らぬ存ぜぬを貫いてきた。

そんなわけがない――と、母だって分かっている。でも聞かずにいられないのだ。

毒親は知ればいい。子どもに許される日など、未来永劫訪れるはずがないということを。

わたしだって許したわけじゃない。でも大人だから、社会人だから、良識を疑われたくないから、道で転んだお年寄りに手を差し伸べている。それだけだ。


アクセルとブレーキを踏み間違えた父の昔

高齢親 免許返納 説得方法 (6)


アクセルとブレーキを踏み間違えた時、父はどのくらい肝を冷やしたのだろう。

本当に、その口ぶりと同じく「大事(おおごと)」と思わずラッキー程度にしか思わなかったのだろうか。
 それとも冷えた肝を隠すためにわざとどうってことないふりをしたのだろうか。

嘘を追及されたり、保身に走って誤魔化しに誤魔化しを重ねていることを突かれるたびに、母に手を上げたりドアや壁に向かって大きな音をたてたり大きな声で威嚇して、母を『黙らせていた』父を悲しいくらい思い出してみた――。

気の小さなこのクズが、寸でのところで事故にならなかったことに冷や汗をかかなかったわけがない。危機一髪を武勇伝と語るほど、さすがに愚かではないはずだ。

それでも車の運転をしたがるのは何故なんだろう。熟年離婚で自分を捨てた母に「新しい車を買う金を貸してくれ、80万でいいから貸してくれ」と執拗に電話を入れるのはどうしてなんだろう。



70代半ばの父が隠しているもの、吐いている嘘

高齢親 免許返納 説得方法 (4)


父はわたしたちにいったい何を隠してるのだろう。

「本当のことを言ってよ」「どうしてそんなに車が必要なの、どうして免許返納をそんなにもしたくないの」「いったい何を隠してるの」

そう問うてみたい。子どもの頃もそうだったように、わたしや弟には絶対に手をあげないだろうから、父が音を上げるまでしつこく問いただしてみたい。

でも、嘘に嘘を重ねていく父を、『バレないだろう』と目の前で辻褄の合わないその場しのぎの嘘を吐く父を見るのは怖くて、かなしい。

母がこんな父と暮らしたとてつもなく長い時間、ひとりでどれだけつらかったのかを今さら知ってしまうのも怖かった。