音信不通 40代 50代 恋愛 婚活 大人の恋愛 アプリ

マッチングアプリを通じた出逢いの弊害は、「ダメだったらまたアプリでどうにかなるだろう」という思考に行きつくところだと思った――。





今年の2月に生まれて初めてマッチングアプリに登録をした。前評判や印象が良くないものだったことから、恐々スタートさせてみたものの

"初マッチング相手が、国際ロマンス詐欺師"というイレギュラーがあったおかげでハードルがぐんと下がり、およそ2週間後には現在の彼と縁ができて今に至る。



マッチングアプリに対して(珍妙ではあったけれど)悪い印象がないせいか、万が一の際には出戻ればいいよね! と思ってしまっているところがある。

その気持ちの反対側に「でもめんどくさいな~」という思いも同じだけあるんだけど、それはそれとして『逃げ場がある』というのは表裏一体だなと思う。

大嫌いな(制作会社の)チャラついたディレクターがいるんだけど、その男性がかつてよく言っていた。

「付き合ってる女に優しくできるのも冷たく出来るのもぞんざいに扱えるのも、家庭・妻という帰る場所が俺にはあるからだ」と。

クソみたいな男のクズな発言と、自分のそれを同一線上に並べたくはないけれど――結局奥様に捨てられてたし、ざまぁみろ。女をなめすぎ!――逃げ場があるというのは、人を穏やかにも小ズルくもさせる。

珍しくわたしから送ったLINEに既読がついて、ひとまずの安否確認がとれた。彼はとりあえず動いている、よかったよかった。



今にも倒れそうなほどの忙しさの渦に身を投げている最中、彼のことは頭を過らなかった。3~4日は本当にすっぽりと頭の中から消えていた。

正直にいえば、もうこのまま連絡がなくてもいいかな? と思ったりもした。楽しかったけれど人生を寄り添う相手ではなかった、ただそれだけだとあっさり割り切れそうな自分に少し引いた。

「とりあえず今はいいや、視界から彼が消えても」

LINEのリストから彼を非表示にした。彼からの発信があれば通知されるし、なければ消えたまま。
わたしから連絡をとりたくなれば非表示を解除すればいいだけだ。今はとりあえず仕事にゴールがほしい。さすがに本気で疲れてきたぞ。



ふらふらになって帰宅すると、フィリピン人家政婦のマリアさんがわたし宛の置手紙を書いているところだった。

「お土産に頂き物のフレッシュゼリーあるんですけど、ひとつ食べて帰りませんか?」
「ワアオ! イイデスネー」

前述したようなことと、某俳優への盛大な愚痴(悪口とも言う)をマリアさんに聞いてもらう。

ふんふん、ふんふん、オイシイデスネー

話の内容を分かっているのかいないのか、ゼリーがよほど美味しかったと見えて(2つめが欲しいのか)冷蔵庫とわたしを交互に見やるマリアさん。

「はい。どうぞ」
「ワア! アリガトウゴザイマス ダケドモ……」
「ん?」
「弟サンノ夢、叶ワナイノ?」
「ん? あっああ……」

老いた父の今後を決めるべく、弟がわが家にやって来た日。
雑談の流れから「僕たちは姉弟だけどあと1人足せるとしたら兄弟・姉妹だれがいい?」という話になった。

「いっせーのーで、で言おう」
「いいよ」
「いっせーのーで、お兄ちゃん!」
「お兄ちゃん」
「おお、同じ~」
「あの人はお兄ちゃんになりそう?」
「ん~わっかんないな~」
「面白そうな人だし俺はOKだからね」

「弟の夢かあ……」
「叶イソウナ夢ダケドネ。アカツキサンハモウ少シ、彼氏サンヲ思イ出ス時間ツクッテモイイカモシレナイデスネ。少シ冷タイカモシレナイデスヨ」

あかつきさんはもう少し、彼氏さんを思い出す時間を作ってもいいかもしれないですね。少し冷たいかもしれないですよ。

そっかあ……。